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人は船の旅のたのしさを忘れている。
君の豪華なサロンが
あなたの化粧室や、バス付の寝室が、
海神に護られて波の上を走る爽快さを。
*
空の旅で省略された距離感が、
世界のデタイユとともに取り戻され、
胸ふくらませ近づく港、港が、
異教の祭りの熱狂で諸君をむかへる。
*
波のふちどる旅の道筋には、
自然の豊穰と風俗の変化があり、
単調で、悩みの多いこの人生に
おもひもかけない夢の贈物を届ける。
*
人は船の旅のよろこびを忘れている。
七つの海のうら若い巨船たちは、
荒れる波風にも揺らぐこともなく、
しづかに、しづかに、航海をすすむ。
*
海の緑玉のうへを辷る船棲は
賀宴にのぞむ盛装のすり足のやうに、
大きなデコレーションケーキが、
宴席の中央に運ばれてゆく時のやうに
*
自由と、清新な希望との象徴のやうに、
ピンポンのやうに弾むこころで、
船をあくがれることを人は忘れている。
船の旅でしか出会へない、宝石の人生を。